主な実験装置・設備

原子間力顕微鏡(AFM)装置とその制御システム

 
  

自作の大気・液中用AFMヘッドをアサイラム・リサーチ社のコントローラで制御しています [1]。

現在、液中で世界最高レベルの分解能(90 pm)を誇るAFMシステムです [2]。

生体分子・生命現象の高分解能観察の他、このシステムをベースとした装置開発にも用いています。

最近では、固液界面における水分子の3次元分布を原子スケールで可視化することにも成功しました [3]。


[参考文献]

[1] T. Fukuma and S. P. Jarvis, “Development of Liquid Environment Frequency Modulation Atomic Force Microscope with Low Noise Deflection Sensor for Cantilevers of Various Dimensions” Rev. Sci. Instrum. 77 (2006) 043701.

[2] T. Fukuma, M. J. Higgins, S. P. Jarvis, “Direct imaging of lipid-ion network formation under physiological conditions by frequency modulation atomic force microscopy” Phys. Rev. Lett. 98 (2007) 106101.

[3] T. Fukuma, Y. Ueda, S. Yoshioka, H. Asakawa, “Atomic-Scale Distribution of Water Molecules at the Mica-Water Interface Visualized by Three-Dimensional Scanning Force Microscopy” Phys. Rev. Lett. 104 (2010) 016101.

開発中のAFMコントローラ

AFM制御装置・プログラムなどの開発スペースです。

AFMの多機能化や高速化を進めるための装置開発を行っています。

従来アナログ回路で行っていた制御も、近年ではFPGAを利用したプログラミング可能なデジタル回路で構成する場合が多くなってきました。

さらに、それをコントロールするためのWindowsベースのホストプログラムの開発も必要とされるため、装置開発に締めるソフトウェア・ファームウェア開発の割合は年々上がってきています。

当研究室には、高速FPGAボード上にデジタル信号処理回路を実装するためのファームウェアや、それをホストPCから制御するためのソフトウェアを開発する環境が整備されています。

また、周波数応答分析器や、ロックインアンプなどの高価な計測機器も備えられています。

高真空蒸着装置

金などの金属薄膜を基板上に成膜するための抵抗加熱真空蒸着装置です。

蒸着源を2つ備えているため、大気開放することなく2種類の金属を連続して成膜できます。

600℃までの基板加熱や、基板の回転機能などを備えているので、結晶性の高い均質な膜を成膜できます。

作製した試料には主にAFM観察用の基板として用いられます。

スパッタ―コータ (WPI共通利用機器)

ターゲットを3つセットして、大気開放することなく連続して3種類の材料を成膜できるスパッタ装置です。

水晶振動子を用いた膜厚計を備え、サブナノメートルの精度で薄膜を作製することができます。

超純水製造装置・乾燥機・ドラフトなど

超純水製造装置としてスタンダードな地位を確立しているmilliQシステムですが、その中でも最も高性能なmilliQ Elementを用いています。

原子レベルのイメージングを行う実験のなかには、溶液中に含まれるイオン濃度に非常に敏感な場合もしばしばあります。そのため、可能な限り高純度な純水を用いてライフサイエンスの実験を行っています。

試料調製設備

AFMやその他の手法を用いて構造や物性を計測する対象となる試料を調製するスペースです。

超音波洗浄機、精密電子天秤、pHメータ、ホットプレート、スターラなどの基本的な理化学機器を備えています。現在は、主にモデル生体膜の試料調製を行うことが多くなっています。

ドラフトチャンバー・クリーンベンチ

揮発性の有機溶媒・酸を安全に取り扱うためのドラフトチャンバーや空気中の塵や微生物が実験試料中に混入することを避けるクリーベンチなどを備えています。

機械工作設備

当研究室では、AFMを一から設計・製作しているため、機械図面を作成して外部業者に依頼するだけでなく、自分で簡単な機械加工をすることもしばしばあります。

ここには、そのための簡単な機械工作器具がそろえられています。

写真のボール盤、電動糸ノコの他に、マイクログラインダー、スポット溶接機、その他いろいろなハンドツールを備えています。

電子工作設備

当研究室では、AFM内部のセンサ回路やAFM制御回路、その他多くの電子計測回路を自分で設計・製作しています。

先端計測では、原理的な信号対雑音比(SNR)の向上だけでなく、それを実装するための技術が必要です。

そのためには、外部業者に委託して製作した回路では、十分な性能が得られない場合が多く、また、試作のための時間がかかりすぎる場合も少なくありません。

そのため、高性能なアナログ電子回路を自作できるノウハウを持っている点は、当研究室の大きな強みとなっています。

高感度蛍光顕微鏡

モデル生体膜やタンパク質のAFMイメージングでは、生体分子をフラットな基板に固定化して観察します。

このとき高分解能AFM観察に適した試料を再現性良く作製することが重要となります。

当研究室では、浜松フォトニクスの高感度CCDカメラを備えた落射蛍光顕微鏡を利用したAFM試料作製プロセスの評価を行っています。

長時間観察でもフォーカスを維持できるパーフェクトフォーカスシステムを備えています。

紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計

紫外(UV)・可視(Vis)領域に加えて近赤外(NIR)領域まで連続した測定ができる分光光度計です。

入射角可変ホルダを備えており、薄膜の膜厚計測や光学フィルターの特性などが評価できます。

また微量の有機・生体分子の定量・構造解析など幅広い用途で利用しています。

冷却遠心機・冷却超遠心機

据置タイプの冷却遠心機(最大遠心加速度22,000×g)と冷却超遠心機(最大加速度600,000×g)です。

遠心力を利用して質量・密度のわずかに異なる微粒子を分画することが出来ます。主にタンパク質複合体やリポソームの分離・精製に使用しています。

レーザーヘテロダイン変位計

光ヘテロダイン方式を用いたレーザー変位計です。

自作したAFMスキャナーの周波数応答特性を評価するために使用しています。

粒子径・ゼータ電位計測装置

コロイドの粒子径分布(測定レンジ:0.3 nm-10 µm)や、タンパク質や高分子の分子量を調べることができます。また粒子状および平板状試料のゼータ電位も計測できます。AFM観察試料の調製プロセスの条件検討を行なっています。

超音波破砕機

強力かつ安定に超音波を発生する超音波破砕機は、ベシクルや粒子状材料の分散などAFM観察試料の作製に利用しています。

市販のAFM装置

研究課題に応じて市販の高性能AFMと独自のAFM技術を組み合わせて研究を進めています。

表面の凹凸や幅を正確に計測することが必要な場合には、低ノイズのクローズドループスキャナを備えたCypher(Asylum Research社)を用いています。

また、細胞や微結晶などのマイクロメーターサイズの試料上に、正確に再現性良く探針を位置合わせして、それらの表面をAFM観察する場合には、倒立型光学顕微鏡上に設置したNanoWizard3(JPK Instruments社)を使っています。

マイクロマニピュレーター

微粒子・薄膜など微小試料のピックアップと移動を高精度に行なうことが出来る装置です。マウスだけで2本のプローブを容易に操作することができます。さらにマイクロスケールの精密な掘削も可能であるため、試料表面の微細加工などにも利用しています。

接触角計

接触角計は基板状試料のぬれ性を計測する装置で、親水性・疎水性を定量的に評価することが出来ます。

表面自由エネルギーを算出するソフトウェアも備えています。

電気炉

1200度程度で試料を熱処理することで、清浄かつ原子レベルで平坦な基板を作製することができます。

ワイヤボンダ

電子回路上に数十~数百マイクロメートルの太さの金ワイヤを微細配線することができます。

レーザ加工機 (WPI共通利用機器)

様々な素材を100µm以下の精度でレーザー加工(カット・彫刻・マーキングなど)することができます。主に、ゴムシートの加工に使用しています。